今回は、サンフランシスコの可能性のハードコアについて、
しっかり書いてみたいと思います。
既にいろいろ書いてきましたが、サンフランシスコには豊かな文化運動、社会運動の伝統があります。ビート、ヒッピー、サイケ、ハッカー、ヒップホップ、スケーター、ゲイ、レズビアン、エコロジー。サマー・オブ・ラヴ、クリティカル・マス、ブラック・パンサー、SF Pride、ラディカル・ソフトウェア。ここでは、文化的なことが政治的なことであり、政治的なことが文化的なことである、という状況を強く感じることが出来ます。
一つ例を出します。
僕はある日、ミッション地区の街角で煙草を吸っていました。そのとき僕は、灰色地に黒い森が書いてある変な長袖Tシャツを着ていました。そうすると、おじさんが話しかけてきました。
おじさん(以下O)
「いい服だな。俺はさー、ロゴが書いてあるTシャツが大嫌いなんだよ。バンドの名前とか、ブランドの名前とか。」
僕(以下B)「そうっすね。僕もあんまそういうのは着ないっすね。似合わないし。」
O「似合う、似合わないはどうでもいいんだよ。ポイントはさー、Tシャツが記号(看板)になっている、ってことなんだよ。例えばさー、エコロジー団体とか、みんなおそろいのメッセージTシャツ着てるだろ。あれってさー、「宣伝」の方法論じゃん。そういう方法でやってる事自体が資本主義的なんだよ。わかるか?」
B「はあ。なんとなくわかります。内容だけではなく、形式とかメディアとかにも意識的になって批判性を持つべきだということですか?」
O「そう、それ。大体あってる。で、おまえはいいTシャツ来てるな、と俺は思ったんだよ。」
B「はあ。。。ありがとうございます。」
O「ところでな、煙草一本もらえるか?」
B「はい。」
O「ありがとな。」
B「いえいえ。」
どう考えても彼は煙草が一本欲しかっただけだと思うんですが、そうするために僕の服を褒めつつ自分の意見を披露し、自分の考えと価値を相手に認識させ、お互いのリスペクトを深めた上で、煙草を「せびる」のではなく「友好のしるしとして受け取る」に転化させるこのコミュニケーション能力に、僕はびびりました。
...書き終わってから思ったけど、あんまいい例じゃなかったな。しょうがないからもう一つ例を出します。ロブ・ニルソンという日本でも若干知られている映画監督がサンフランシスコにいます。
http://www.robnilsson.com/
彼が日本で知られているのは、「Northern Lights」や「Heat and Sunlight」、「WInter Orange」といった作品が映画愛好家の間で認識されているからです。とりわけスタジオ・マラパルテの宮岡秀行氏は彼を良く知り、日本に紹介した一人です(http://www009.upp.so-net.ne.jp/malaparte/)。
ところで、彼はサンフランシスコ市内のテンダーロイン地区で地元住民たちと映画を製作しています。テンダーロイン地区は、僕と梅田くんが最初のプロジェクトをした場所ですが、サンフランシスコでも治安が悪いといわれている地区です(個人的にはそこまでじゃないと思います)。ここの住人たちが俳優、女優、撮影、編集、録音などを担当しながら、10年以上も映画製作は続けられています。それはワークショップであり、カウンセリングであり、技能や職の提供です。彼の「作品制作」と、こういった「社会的実践」の間には、垣根がないというか、必然的な結びつきがあるように僕には思えます。そしてこれはやはり、サンフランシスコ的だと思うのです(ビデオの使用と集団制作との関連から論じることも出来るはずですが、それはマラパルテ発行のSagi Timesに譲ります。みなさん見かけたら買いましょう。)。
さて、本題です。
僕は、社会とアートがいかに結びつきうるのか、について考えることがサンフランシスコに滞在している僕がやるべきことだ、と考えました。ということで、以下に参考ケースを挙げていきます。
いままでずーっと書いてきませんでしたが、Southern Exposureというスペースがあります。ここは、先に進もうとしているアートスペースだと思います。サンフランシスコに来る方で、キュレーターとして活動なさりたい方は、まずここで人に会い、交流することをお勧めします。
http://soex.org/index.html
基本的にプロジェクト・ベースです。ちなみに横にラジオ局があります。National Public Radioにひっかけて、Neighborhood Public Radioっていうんですけど。
http://www.neighborhoodpublicradio.org/
ラジオ放送の他、街中に音を持ち込むプロジェクトもやろうとしています。
「掲示板」欄に書いたNOSOもここでお披露目パーティーをしました。
NOSOはこれ。
http://nosoproject.com/
The Collective Foundationなんかも、ここと結びつきが深いです。
http://www.collectivefoundation.org/
以上は、キュレーター業界(?)の評判もいい、良質なアート・プロジェクトです。社会の中で、コンセプチュアリズムを保持しつつ、プロジェクトを遂行しています。
しかし、僕はこれらのプロジェクトが若干いけてないと思っています。なんつーか、いまいち抜けが悪い。ということで、次回はThe Luggage Storeで開催されているRIGO23の展覧会について書きたいと思います。彼の社会に対するアプローチは上のようなプロジェクトとは違います。この差異が存在していることがサンフランシスコの良さかなーと。RIGOのことを書いて、実はうやむやにしていたWorlds' Fairの完全リポートを書いて、とりあえずサンフランシスコに関しては、なかなか良い情報をみなさんに提供できたのではないかと思います。大体、初めてのアメリカで、若干落ち込んだりしながらも、頑張ったよ、俺。最初の頃にこけちゃいましたけど、最終的には自分で自分を褒めてあげたい!(マラソンネタ2 発!)
6月下旬にはSFに戻ってきてプロジェクトをやるんですが、それについてはまた書きます。明日からLAです。7月になにかプロジェクトをする予定です。なにやろうかな。。。
なんか、独り言パート2みたいになりました。すんません。